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ワイナリー巡り:ジャニソン・バラドン(フランス/シャンパーニュ/オンラインイベント)

2020年12月17日(木)にワインプロデューサーの大西タカユキさん開催のオンラインインベント、シャンパーニュの新鋭ジャニソン・バラドン(Janisson-Baradon)のワイナリーツアーに参加しました。

最初に言っておきますと、こんなに見せてくれるの!?って感じです。

オンラインイベントについて

参加費

参加費は

  • 視聴のみ550円
  • ヴァンドヴィル 375ml付き5,300円
  • ヴァンドヴィル 750ml付き7,400円
  • キュヴェ・ナミダ 750ml付き8,000円
  • ブリュット ロゼ 750ml付き8,600円

と、ワインの種類を選べるタイプのワイナリーツアーでした。

参加方法

申込はPeatixを使って申込をしました。当日はZoomというオンライン会議システムで開催されます。申込をすると当日のZoomのアドレスなどが送られてくるので、開催時間になったらそのアドレスから入室します。

Zoomにはバーチャル背景と言って、自分の後ろに映り込む背景を、別の写真に差し替える機能があります。今回は開催者さんからジャニソンバラドンのあるヴィニュロン通りをイメージしたバーチャル背景画像を送っていただきました!

顔出しを強要されることはありません。ビデオをオフにして参加することも、オンにすることも自由でした。ただし、ミュートにして参加するのがルールとなっていました。何か発言をしたい時は、チャット機能を使います。質問やコメントをどんどんくださいね!という感じでした。

プログラム

  • Zoom号に乗ってフランスのシャンパーニュ地方へ出発!
  • おーみんの3分ワイン講座「シャンパーニュの基礎知識」
  • フランスのシャンパーニュ地方「ジャニソン・バラドン」の畑に到着!
  • ブドウ畑で乾杯&集合写真!
  • ブドウ畑見学
  • 醸造所までドライブ!
  • カーヴ内見学
  • 地下カーヴ見学(スペシャルムービー)
  • オーナー・シリルさんからジャニソン・バラドンのシャンパーニュ説明

このような流れで進みます。予定では20時〜22時と、盛り沢山!!さらにオーナーのシリルさんの出演は10分延長!そして途中で視聴しなくてよくなったスペシャルムービーの未公開部分まで見せていただき、たっぷりと楽しむことができました。

というわけで、オンライン見学ツアーのスタートです!

3分ワイン講座「シャンパーニュの基礎知識」

一応、このブログでもご紹介している「シャンパーニュメゾン訪問のためのシャンパン入門講座」のリンクも貼っておきますが、今回はオーミンさんが説明してくださっているので、予習は不要でした!

シャンパーニュ地方について、まずは場所の確認です。シャンパーニュ地方はこの辺りです。

エペルネ

ジャニソン・バラドンはシャンパーニュの聖地と呼ばれるエペルネに位置しています。エペルネのシャンパーニュ通りにはモエ・エ・シャンドンなどの有名なシャンパンメーカーが軒を連ねています。

ジャニソン・バラドンのショップもエペルネの市街地にあるんですよ。

2018-10-25_17-48-28_820 シャンパーニュ通り

有名なドン・ペリニョンの銅像は、モエ・エ・シャンドン社の入り口にあります。

Dom Pierre Pérignon

こちらが以前に訪問した時のエペルネ駅の様子。シャンパーニュ地方の中心都市ランスからは電車で20分くらいです。

エペルネ駅 エペルネ駅

気候

シャンパーニュ地方は冷涼で厳しい気候条件です。上の地図の通り、緯度はパリと同じくらいで、フランスのワイン産地としては北限です。

カーヴ

地下に巨大な石灰質のカーヴが張り巡らされていて、そこに瓶を寝かせて長期熟成させています。

ブドウ品種

シャンパン造りに使われるブドウ品種は、主にシャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエの3品種ですが、他に4種類のブドウ品種も認められています。

シャンパン造りについて

ピノ・ノワールとムニエは黒ブドウです。黒ブドウというのは、巨峰のように皮が紫色をしたブドウで、一般的には赤ワインを作るのに使われます。黒ブドウを使っているにもかかわらず、シャンパンは白ワインにもなります。その秘密は、皮から色が出ないように、十分に注意しながら優しく絞るから。

また、とても熟しているヴィンテージはそれでも色が多少ついてしまうことがあるそうですが、その後も工程で色が消えていくので、販売するシャンパンに色がつく心配はありません。

シャンパンといえば泡ですよね?シャンパンはまずベースワインを作るところから始まります。ベースワインを瓶詰めをして、酵母と糖分を加えて栓をして閉じ込めることで瓶内で二次発酵が起こり泡が発生します。瓶内二次発酵のあとのシャンパンに糖分はほとんど残りません。発酵の際、酵母が糖分を全て食べ尽くすからです。そこで最後にリキュールを加えて、甘口辛口の味わいを調整をします。

気候が厳しいシャンパンでは、複数の品種や熟成しておいたリザーブワインを毎年ブレンドすることで、安定した品質と味わいのシャンパンを作っています。

フランスのシャンパーニュ地方「ジャニソン・バラドン」の畑に到着!

というわけで、私たちを乗せたZoom号はシャンパーニュ地方に到着です。本日のシャンパーニュ地方の気温は10〜11℃ほど。この数日間はずっとぐずついたお天気だったそうですが、今日はご覧の通り、天候に恵まれました。

今回見せていただいたのはチューブッフ(Tueboeuf)と言う畑です。チューブッフは古い畑で、樹齢60年の古木も植えられていました。

この畑にはピノ・ノワール、ムニエ、シャルドネ、ピノ・ブラン、ピノ・グリ、プチ・メリエ、アルバンヌの7種類が植えられています。この7種類は、シャンパン造りで使用を許可されているぶどう品種の全てです。30年以上も化学的な農薬を使っていないので、環境に配慮したブドウ造りをしています、という認証を受けているそうです。

12月にはブドウ畑は剪定を行うため、ブドウの木はすでに枝葉のない状態となっていました。剪定していない状態なら、葉や房の形で品種が分かるそうですが、この状態ではヴィニュロン(ブドウ栽培家のこと)であっても品種の識別は難しいそうで、品種が書かれた札が貼られていました。(ジャニソン・バラドンは、ブドウ栽培も自社で行っているため、シリルさんはご自身のことをヴィニュロンと呼んでいました)

シャブリ方式と言って4本の枝を残して剪定するようにしているそうですが、この畑には古木が多いので、必ずしも4本残せるわけではありません。その場合は状況に応じた本数の枝を残すそうです。

剪定されて不要になった枝は、その場で焼却するそうです。畑に直接火を放つわけではなく、動く焼却炉のようなものを使って枝を燃やします。したがってブドウの木が燃えてしまうような事はありません。ちょうど隣の畑で燃やしている様子が見えました。

2020年はとても良いヴィンテージだったにもかかわらず、COVID-19のせいで経済状況が悪くなってしまいました。シャンパーニュ地方はワイン産地としてとても特殊な産地で、収穫量をシャンパーニュ委員会が決めているのだそうです。COVID-19発生時から数ヶ月間のシャンパンの売上予測を行い、収穫量を30%減らすことを決めたのだそうです。

土の乾燥を防ぐため、トラクターを使って畑を耕しているそうです。耕すと言うより土を引っ掻いてひっくり返すと言うイメージ。したがってひっくり返す土の厚さは10センチ位で、ブドウの木の根っこを切ってしまう心配はないそうです。

2020年の収穫は8月頃に始まったそうで、これは例年に比べても早いそうです。35年くらい前は10月頃に収穫をしていたそうで、地球温暖化などの影響で収穫時期が変わってきているのを感じているそうです。

収穫時期は、(1)シャンパーニュ委員会が決める日程と、(2)ヴィニュロンが決める日程の2つがあります。

1つ目のシャンパーニュ委員会が決める日程は、ブドウ栽培をしているそれぞれの村で意見を出し合い、その意見をもとにシャンパーニュ委員会が収穫開始日を決定し、その日の2週間くらい前に発表するそうです。

2つ目がヴィニュロンが判断する方法。味を確認したりして決めるそうです。しっかりと熟すのを待って収穫するようで、シャンパーニュ委員会が決めた日程よりも1週間から10日位遅くなることもあるそうです。

地球温暖化の話も出ていましたが、シャンパンのキリっとした味わいには酸味が不可欠です。しかしブドウは気候が暑くなって日照量が増えると、酸がどんどん減少します。例えるなら、フランスの冷涼なシャブリで作られるシャルドネワインと、カリフォルニアの温暖な地域で作られるシャルドネワインとでは、キリッと感がまるで違います。気候の違いはこのような違いに繋がってくるのです。

気候の変化は使われるブドウ品種に変化を起こすかもしれません。今は、シャンパンにはピノ・ノワール、シャルドネ、ムニエの3品種が使われることが多いですが、これがアルバンヌやプチ・メリエに変わる可能性もあるわけです。というのも1950年代にこれらの品種が減ってきた理由が酸っぱすぎたから。しかし今後、温暖化によって酸味があるぶどう品種が求められる場合には、こうした品種が多く使われるようになるかもしれません。

醸造所までドライブ!

畑見学の後は、農道を通り、車で醸造所まで移動します。農道なのでセンターラインも信号も横断歩道もない田舎道ですが、大好きなフランスの田舎の風景を画面越しに見ることができて、とても嬉しかったです。

畑は醸造所のすぐ裏手にあるのですが、車だと道路が遠回りになっているため、5分くらいドライブする必要があるそうです。

そして到着。

この写真は醸造所から前の通りを見たものです。通りが坂道になっているのは分かりますか?右側に先ほどのブドウ畑があり、収穫の時なんかはこの坂を通って摘んだブドウを運んでくるそうです。

カーブ内見学

それではいよいよカーブの中に入ります!

収穫〜果汁を絞る

こちらの赤い機械は圧搾機です。圧搾機はブドウの収穫時にしか使わないので、他の物も所狭しと置いてあるのだそう。醸造所のスペースを上手に活用しているんですね。

この赤い箱は収穫の時に使う箱です。シャンパーニュ地方は、収穫を手摘みで行うことが決まりなので、ブドウをこの箱に入れながら収穫作業をします。この箱には約40kgのブドウが入ります。

収穫されたブドウは、1階の天井にあるこの穴から圧搾機に入れます。入れる場所は2階にあるそうです。圧搾機には、一度に4,000kgのブドウが入り、3時間から3時間半かけてゆっくりと絞っていきます。

絞られた果汁はパイプを通ってこの浴槽に入ります。浴槽は3つの空間に分けられています。1つ目は2,050リットル入る大きな浴槽。2つ目と3つ目には、それぞれ500リットルずつ入ります。2,050リットルの浴槽は、キュベと呼ばれる1番絞りの果汁が入ります。浴槽に入った果汁は速やかに発酵タンクへと移動させます。


アルコール発酵(ベースワイン作り)

果汁に酵母を加えると、アルコール発酵してベースワインができます。ベースワインのアルコール度数は11度。このアルコール度数はシャンパンや瓶内二次発酵を行うスパークリングワインとしては一般的な度数です。二次発酵でさらにアルコール度数が上がるので、アルコール度数低めのベースワインを作ります。

果汁のフレッシュ感が損なわれないように、速やかにタンクへと移動させるのがとても大事!なぜなら酸化してしまうとフレッシュ感がどんどん失われてしまうからなんです。お家でバナナジュースやリンゴジュースを作ると、あっという間に酸化して変色してしまいますよね?あの状態にさせないように、とにかく素早く発酵タンクに移動させるのだそうです。

さらに隣の部屋へと進むと、今度は木樽が置いてありました。

小樽は228リットルでブルゴーニュのもの、大樽は3420リットルが入るものだそうです。ミレジム(ヴィンテージ)などの特別なシャンパンは、樽で発酵させるそうです。

今は大樽には2015年のシャルドネなどがリザーブしてあります。

ベースワインを作ったあと、ブレンド(アッサンブラージュ)を行います。村ごと、また品種ごとなど、細かく分けられたワインを全てテイスティングしてブレンド比率を決めます。ジャニソン・バラドンではシリルさんのほかに、弟さんやお父さん、醸造コンサルタントの最低4名でブレンドを決めていくそうです。ブレンドしたワインは瓶詰めして、瓶内二次発酵へと進みます。

地下カーブ見学

瓶内二次発酵

シャンパンは最低でも15ヶ月は熟成させないとならないので、瓶詰めされたワインは地下のカーブへと移動されます。地下カーブは常に12度で、湿度も一定。シャンパンの長期保存に最適な空間です。

ジャニソン・バラドンの地下カーブは1901年に、ジャニソン・バラドンの前の所有者によって作られたそうです。

カーブはシャンパン地方特有の石灰岩で作られています。上の写真ではわからないのですが、一番奥まで進むと石灰岩が剥き出しになっている部分があり、下の写真のような壁も見せていただきました。テタンジェのワイナリーツアーで、実際に壁を触らせて頂いたのですが、石灰岩はとてもしっとりとしていました。こちらの壁も同じような質感なのでしょうか?

カーブの中には、こんな風にシャンパンが眠っています。札の一番下にある「1328」などの数字は、1328本あるという意味だそうです。

瓶内二次発酵が終わったシャンパンのボトルには、澱という酵母の死骸などが沈殿し、濁った状態となります。酵母の死骸と聞くと少し嫌な感じがしますが、澱が長い時間をかけて自己分解することで、ブリオッシュやパン生地のような独特の風味が生まれるのです。

出荷前にはこれを取り除き、澄んだシャンパンにする作業があります。この作業をデゴルジュマンと呼びます。まずは瓶をゆっくりと傾けて澱を瓶口に集めます。このときに使われるのがこちらのピュピトルという台。瓶が逆さになっているのが分かりますね?

瓶口に集まった澱を一気に冷却し、取り除いていきます。この緑色の機械が冷却装置。

澱を取り除いたら、リキュールを添加して甘口辛口具合を調整します。こちらの機械でリキュールを添加するそうです。

そしてコルクで打栓し、シャンパンのふたについているワイヤーとキャップシールを取り付けます。下の写真は打栓前のコルク。シャンパンのコルクはキノコのような形をしていますが、打栓前はこの通りまっすぐです!

最後にラベルを貼って出荷です。

オーナー・シリルさんからジャニソン・バラドンのシャンパーニュ 説明

過去のヴィンテージを少しずつ取っておくスペース、ウノテークに移動します。こちらには文字通りお宝ワインが眠っています。販売用ではなく、お客様をもてなしたりメゾンの記録としてのワインを残しておくのが目的。残念ながら、こちらのワインは買えないんですね〜。

まとめ

今回のズームでのオンラインマイナリツアーは、ジャニソン・バラドンにとって初めての試みだったそうです。最初はオンラインでそんなことできるのかなと不安を抱いたそうですが、まるで自分が日本にいるかのような、そして私たちがシャンパーニュ地方に来ているかのような感覚で、ワイナリーツアーを開催できた、とおっしゃっていました。

例年レベルの中心街にあるブティックには毎日日本人のお客さんが来ていたのですが今年は皆さんに会えなくてとても残念でした。またいつか会えるといいですねと言うお話をしてくださいました。

オーナーのシリルさんのお人柄がとてもよく伝わってくるツアーだったと思います。物理的には遠く離れているものの、インターネットを通して暖かい心に触れることができるイベントでした。

ジャニソン・バラドンのシャンパンの一つ「キュベ・ナミダ」は来日したシリルさんが、日本人に暖かく迎えてもらえたことに感動し、帰国の時に思わず泣いてしまったというエピソードから名付けられたシャンパンです。このエピソードで語られる人物像そのままの素晴らしい方でした。

そもそもブドウ畑から出荷まで、全ての工程を見せてくださるワイナリーツアーって初めてですよ!特にシャンパンは瓶内二次発酵があり、泡のない普通のワインと比べて工程数が多いので、見学行程を削らざるを得ません。それなのに、こんなに1から10まで見せてくださるなんて…!感激しました。

コロナが収束したら必ずまたエペルネを訪問し、ジャニソン・バラドンのワイナリーとショップを訪問したい!と強く思いました。

オーミンさんもすごく盛り上げ上手で、お話も上手だし楽しかったです。自分では思いつかなかった質問など、痒いところに手が届くような絶妙な質問や解説を入れてくださって、とても勉強になりました。いつかシャンパーニュ地方を訪問するツアーを組んでくださるなら、是非参加したいです。

インフォメーション

ジャニソン・バラドン(Janisson-Baradon)
公式ホームページ

ワインプロデューサー大西タカユキ(オーミン)公式サイト