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アルザスワインのラベルを読む

アルザスワインの多くは、単一のブドウ品種で作られています。こうしたワインはラベルに「リースリング」「ピノ・グリ」というように、品種名をそのまま記載します。まれに、複数のブドウ品種をブレンドして作られるワインもありますが、この場合はラベルにブドウ品種は記載されません。

他のフランスの地域を見てみると、シャンパーニュはメゾン、ボルドーではシャトーと呼ばれる醸造所の名前が、ブルゴーニュは村や畑など区画の名前が表記されるだけということが多いです。したがって「AOC」と呼ばれるワインの法規制を知らないと、そのワインがどの品種から作られているかピンと来ないことが多いです。

しかし、アルザスワインは品種名が明記されているので、ご自身のお気に入りの品種を知っているだけで選ぶことができるのです。

この記事では、アルザスワインのラベルの読み方をご紹介いたします。

アペラシオン

AOCアルザス(AOC Alsace)

アルザスで生産されたワインであることを保証されたワインです。

AOCアルザスを名乗るためには、アルザスで生産・瓶詰めをされることが必須条件です。

また、7つの品種(リースリング、ピノ・グリ、ミュスカ、ゲヴュルツトラミネール、シルヴァネール、ピノ・ブラン、ピノ・ノワール)を使った白ワイン、赤ワイン、ロゼワインにのみ使うことができます。

2011年以降、AOCアルザスには、村名または区画(リュー・ディ)を付記することができるようになったので、比較的新しいワインには、何らかの地名が入っていることもあります。

AOCアルザス グラン・クリュ(AOC Alsace Grand Cru)

平たく言えば、ワンランク上の上質ワインといったところでしょうか。

51の偉大な区画(リュー・ディ)から作られる、厳しい品質基準を満たしたワインはグラン・クリュという表記が認められています。1975年に制定されたアペラシオンで、白ワインにのみ与えられます。したがって、赤ワインのグラン・クリュは存在しません。

基本的にはリースリング、ミュスカ、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリから作られるワインのみと決まっていますが、いくつかの例外もあります。

生産量はアルザスワイン全体のわずか数%で、非常に貴重なワインです。

AOCクレマン・ダルザス(Crémant d’Alsace)

白とロゼの発泡性ワインです。瓶内二次発酵というシャンパーニュと同じ方法で作られ、最低でも9ヶ月間は瓶内で熟成させる必要があります。

Crémantという単語が発泡性ワインのことを指していて、フランス各地にその地方のブドウ品種で作られるクレマンがあります。

アルザスの場合は、ミュスカやゲヴュルツトラミネールのような香り高いブドウ以外のブドウ品種によって、発泡性ワインが作られています。具体的にはピノ・ブラン、ピノ・グリ、リースリング、シャルドネ、またクレマン・ロゼにはピノ・ノワールが使われます。

クレマン用のブドウは酸味が高い方が好まれるので、通常は収穫時期の最初に収穫されます。クレマン・ダルザスはフランス国内でも人気が高く、シャンパンに次ぐ生産量を誇ります。

ラベル用語

ヴァンダンジュ・タルディヴ(Vendanges Tardives)

フランス語でvendangeは「収穫」、tardiveは「遅れて」という意味です。したがって、ヴァンダンジュ・タルディヴは「遅摘み」ブドウで作られていることを表します。

特に天候などに恵まれた年に限り、通常の収穫が終わった後も摘まずにおき、規程された果汁糖度をクリアするまで過熟するのを待ってから収穫されるブドウがあります。こうしたブドウで作られるワインは、辛口から甘味を感じるものまで、味わいが様々です。

セレクシオン・ド・グラン・ノーブル(Sélection de Grains Nobles)

グラン・ノーブルとは「高貴な粒」を意味し、貴腐ブドウを使ったワインを指します。貴腐菌(ボトリティス・シネレア菌)が付着し、ブドウの水分が抜け、糖分と味わいが凝縮したブドウの粒のみを使って作るワインです。ヴァンダンジュ・タルディヴ同様、最低果汁糖度が規程されており、その規程はヴァンダンジュ・タルディヴよりも厳しいものとなっています。

ヴァンダンジュ・タルディヴ同様、毎年できる訳ではない上に、貴腐菌がついた果実だけを選んで摘んでいくという方法で収穫されるため、大変貴重で高額です。

貴腐菌の影響を受けるので、貴腐ブドウ独特のアプリコットやハチミツのような味わいが加わり、複雑な味わいとなります。また、一般的には甘口ワインが多いです。

ブドウの品種名

「Riesling」「Pinot Gris」など、ブドウの品種名がそのままラベルに記載されているのがアルザスワインの特徴です。

ラベルを読む練習

それでは実際にアルザスワインのラベルを見てみましょう。

Sample1

ALSACE・・・アルザス

Zellenberg・・・ゼーレンベルグ(村の名前)

Pinot Gris・・・ピノ・グリ(ブドウ品種)

2017・・・2017年に収穫されたブドウを使っている

MARC TEMPÉ・・・マルク・テンペ(メーカーの名前)

Anne Marie et Marc Tempé・・・アンヌ・マリとマルク・テンペ(人の名前)

Vignerons á Zellenberg France・・・フランス ゼーレンベルグのブドウ栽培家兼ワイン醸造家

MIS EN BOUTEILLE AU DOMAINE・・・ドメーヌ元詰め(醸造所で瓶詰めしたことを表す)

Sample2

ALSACE・・・アルザス

Louis SIPP・・・ルイ・シップ(メーカー名)

FINESSE, HARMONIE, AUTHENTICITÉ・・・「繊細、調和、本物」(スローガン的なもの)

GRAND CRU KIRCHBERG・・・グラン・クリュ・キルシュベルグ(キルシュベルグが区画=リュー・ディ)

DE RIBEAUVILLÉ・・・リボーヴィレの(キルシュベルグが位置するリボーヴィレは村の名前)

PINOT GRIS・・・ピノ・グリ(ブドウ品種)

2012・・・2012年に収穫されたブドウを使っている

Sample3

ALSACE・・・アルザス

2015・・・2015年に収穫されたブドウを使っている

MARNES-MARL・・・土壌名

FAMILLE HUGEL・・・ファミーユ・ヒューゲル(メーカー名)

Estate・・・エステート(ワイナリー、ワイン生産者という意味)

RIESLING・・・リースリング(ブドウ品種)

TRADITION・・・伝統

まとめ

実際のラベルには、土壌名や区画名など、やや詳しい情報も載ってはいるものの、ご覧いただいたようにブドウ品種がはっきりと書かれているので、分かりやすいことをご確認いただけたかと思います。

アルザスワインはどれを選んでも美味しいと思いますが、自分で選べるようになると、楽しさも倍増する気がします。