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ランスの世界遺産 サン・レミ聖堂とワインの歴史

ランスと言えばノートルダム大聖堂が有名ですが、もう一つ聖堂があります。それがサン・レミ聖堂。サン・レミ聖堂(Basilique Saint-Remi)は、サン・レミ旧大修道院として、1991年にランスのノートルダム大聖堂とトー宮殿と共に世界遺産に登録されています。今日はサン・レミ聖堂とその歴史やワインとの繋がりについてご紹介します。

サン・レミ聖堂の歴史

Basilique Saint-Remi

サン・レミ聖堂は、フランク王国の最初の国王であるクローヴィスに洗礼を行なった聖レミ(フランス語でサン・レミ)=大司教レミギウスに由来しています。聖堂内部には、聖レミギウスの遺体が聖遺物として安置されています。

ロマネスク様式の聖堂は11~12世紀に建築されたものです。第一次世界大戦でひどく破壊されたため、1919年以降再建されました。残念ながら、価値あるものはフランス革命の時に盗難に遭っています。ただしステンドグラスや聖レミギウスのタペストリーは現存しています。

Reims : la Basilique Saint-Remi
聖レミギウスの墓

聖レミギウスが生きた時代

聖レミギウスは、フランスを支配していたローマ帝国が476年に滅亡し、新たにフランク王国が建国する変遷の時代に生きた人物です。

もともとフランスには先住民族のケルト系ガリア人が住んでいましたが、そこにローマ人が植民者として定住するようになります。ガリア人とローマ人との混血の人々が生まれ、彼らはガロ・ローマ人と呼ばれました。当時のフランスはガロ・ローマ人が多く住んでいて、その大半がカトリック教徒でした。

一方、クローヴィス(在位482〜511年)はゲルマン人の一部族であるフランク人でした。もともとフランク人はベルギー北西部に定着していましたが、5世紀に入ると北フランスへと進出するようになり、最終的にはこの地を支配するまでに至ったのです。

496年、クローヴィスはすでにカトリック教徒だった妻クロチルドの勧めで、聖レミギウスの手で受洗します。かくしてキリスト教はフランク王国の国教となったのでした。

Chlodwigs taufe
クローヴィスの洗礼

クローヴィスの洗礼がシャンパーニュ地方ランスに与えた影響については、こちらの記事でも紹介しています。
>>> ランス・ノートルダム大聖堂とワインの歴史

クローヴィスの洗礼にまつわる伝説で有名なものがあります。

洗礼式では群衆が押し寄せ、聖油を差し出す僧侶が祭壇に近づけませんでした。「聖なる香油がないと挙式できない!」と困惑した聖レミギウスが神様に助けを求めたところ、一羽の鳩が飛来し香油の瓶を運んでいくという奇跡が起こったのでした。

このエピソードにちなみ、クローヴィスの洗礼にまつわる美術品には鳩が描かれることが多いそうです。サンレミ聖堂入り口の脇にある「Baptism of Clovis(クローヴィスの洗礼)」という看板には鳩のマークが添えられています。

Basilique Saint-Remi

ノートルダム大聖堂のシャガールのステンドグラスにも鳩が羽ばたいているそうです。(でもどれが鳩かちょっと分からない…真ん中の右上かな?)

Reims Cathedral
ノートルダム大聖堂にあるシャガールのステンドグラス

ワインとの関係

ローマ人はブドウを愛し、ワインを愛していました。彼らはワインが大好きだったので、植民地へブドウを運び、その土地でブドウとワインを作ったのです。

ローマ帝国が滅亡した後も、フランスではブドウ栽培は生き残りました。帝国が滅んだ後、ブドウ栽培の第一人者となったのはキリスト教の司教でした。ローマの慣習に倣い、ブドウを植え、農村を開拓し、収入を得つづけます。

聖レミギウスもそんな司教の一人でした。聖レミギウスが自らの手でブドウを植え、収穫できるようにしたとする文献が残っています。彼は職場であるランスにほど近いエペルネに別荘を購入しました。当時、ランスの司教たちはエペルネやオーヴィレールといったブドウ栽培地に領地を獲得していたのです。

エペルネは現代ではランスに並ぶシャンパンハウスの拠点ですし、オーヴィレールはシャンパンの先駆者であるドン・ペリニョンがいた修道院がある場所です。

さらに前述のクローヴィスの洗礼では、洗礼に使われたワインに霊感を受け、クローヴィスは部下ともどもワイン党になったという伝説もあるのです。クローヴィスのフランク王国建国はまさにフランス誕生の瞬間。フランスの誕生はワインで祝福されていたのです。

こうしてワインが王と宗教に公認される飲み物となったことは、その後のワインの発展に大きく貢献することになるのです。

写真で知るサン・レミ聖堂

それでは、実際に私が撮影したサン・レミ聖堂の写真をご紹介いたします。サン・レミ聖堂はノートルダム大聖堂と比較すると観光客の姿がまばらなこともあり、大変神聖かつ神秘的な雰囲気のある場所でした。

Basilique Saint-RemiBasilique Saint-RemiBasilique Saint-RemiBasilique Saint-RemiBasilique Saint-RemiBasilique Saint-RemiBasilique Saint-RemiBasilique Saint-RemiBasilique Saint-Remi

下の写真はパイプオルガンです。訪問時は演奏もされていて、とても美しい音色で、神秘的な聖堂内部の雰囲気と相まって、ここが現実世界であることを忘れるほど心が揺さぶられました。

Basilique Saint-Remi

インフォメーション

サン・レミ聖堂(Basilique Saint-Remi)
住所:Place Chanoine Ladame 51100, Reims
入場料:無料
開門時間:8~19時
定休日:なし