ボルドーのマルゴー村にある格付け3級、シャトー・フェリエール(Château Ferrière)を2019年11月に訪問したので、その時の訪問記をご紹介いたします。
格付け3級とは?
メドック格付けは、1855年のパリ万国博覧会にボルドー地方のワインを出展する際、ナポレオン3世の命令によりボルドー商工会議所が定めた最初の公式の格付けです。
格付けには赤ワインと白ワインが含まれます。赤ワインの方は、58のシャトー(現在は分割されたものがあり61となります)を1から5級に分類したものです。
シャトー・フェリエールは、上から3番目のランクに相当する3級に格付けられています。
シャトー・フェリエールの歴史
シャトー・フェリエールは、18世紀にガブリエル・フェリエール(Gabriel Ferriere)によって設立されました。 彼は造船業者であり、狩猟の責任者として国王に仕えていました。
ブドウ畑は、1792年にボルドー市長だった、従兄弟のジャン(Jean)によって徐々に拡張していきます。ジャンが亡くなったことで、財産は裁判所によって売却されました。彼の未亡人マリー(Marie)はそれを買い戻します。 マリーにはガブリエル(Gabriel) 、ミシェル(Michel)、ローザ(Rosa)という3人の相続人がいました。
マリーの死後、ミシェル・フェリエールがシャトーの唯一の所有者となりますが、弟のガブリエルと妹のローザを相続人として亡くなります。ローザはジャック・カステン(Jacques Castaing)の未亡人でした。当時、ジャック・カステンはメドック地区ムーリにあるシャトー・シャス・スプリーン(Château Chasse-Spleen)を所有していました。
その後、シャトー・フェリエールは彼らのいとこアンリ・フェリエール(Henry Ferriere)の手に渡ります。
1913年、アンリはシャトーをアルマンド・フォイェラット(Armand Feuillerat)に売却します。当時、シャトー・マルキ・ド・テルム(Château Marquis de Terme)の所有者でした。アルマンド・フォイェラットの娘であるデュラン(Durand)夫人はシャトーを継承し、子供たちに残しました。
1952年、デュランの相続人がブドウ畑をシャトー・ラスコンブ(Chateau Lascombes)の所有者であるアレクシス・リシーヌ(Alexis Lichine)に貸し出し、畑のメンテナンスと運営をお任せすることになりました。こうしてシャトー・フェリエールの畑で取れたブドウによって、シャトー・ラスコンブがワインを作るようになります。
1988年、ジャック・メルロー(Jacques Merlaut)がブドウ畑とシャトーを購入しましたが、シャトー・ラスコンブとの賃貸契約が終了し、娘のベルナデット・ヴィラール・メルロ(Bernadette Villars-Merlaut)が最初のヴィンテージを生み出したのは1992年になってからです。
ジャック・メルロー一族は、シャトー・シャス・スプリーン、ラ・ギュルグ(La Gurgue)、シャトー・オー・バージュ・リベラル(Châteaux Haut-Bages Liberal)の所有者でもあったため、娘のクレア・ヴィラールは両親の死後、母親の後を継ぎ、シャトー・フェリエール、シャトー・オー・バージュ・リベラル、ラ・ギュルグを守ってきました。
訪問記
訪問した日は朝からポイヤック村のシャトー・ムートン・ロートシルトのワイナリー見学を予約していました。見学は一応「2時間半」となっていますが、実際に何時に終わるかが分かりませんし、ポイヤック村からマルゴー村への移動も、時間がどのくらいかかるか、電車やバスがあるのか等に不安があったので、予約不要で訪問できるシャトーを探していました。
そこで見つけたのがシャトー・フェリエールでした。公式ホームページに「Non stop opening from 10 am to 5.30 pm with or without reservation(10時から17:30まで営業中。予約は可能ですが、なくても構いません)」と書いてあります。
テイスティングルームはボルドーのメドック・ワイン街道を突き進む705番バスのバス停の目の前にあります。
中に入ると、真正面にレジカウンターがあり、そこには女性の店員さんがお一人だけいました。彼女にテイスティングをしたい旨を伝え、試飲をさせて頂きました。
試飲は6ユーロでしたが、何か商品を購入すると試飲料金が返金されるというシステムらしいです。つまり、商品を購入した人は、試飲料金が実質無料になるのです。
あとで何か購入するかもしれないので、お会計より先に試飲をさせてくださいました。
テイスティング
試飲は2本。シャトー・ラ・ギュルグ(Château La Gurgue) 2011とシャトー・フェリエール(Château Ferrière) 2011です。
シャトー・ラ・ギュルグ 2011年
ヴィンテージの特徴
冬と春は乾燥していました。当初より、気候条件は早いヴィンテージになりそうだと予測しました。 水不足は7月までに少し悪化し、6月の高温によりブドウは被害を受けました。 メルローは、これらの異常な乾燥と暑さのために開花後に元気がなくなってしまいました。
2011年は異常な気象条件で、最終的に多くのカベルネ・ソーヴィニヨンに利益をもたらしました。 ブドウはフェノール化合物と非常にエレガントなタンニンが凝縮していました。このヴィンテージで大変だったのは、ブドウを厳しく選果した点です。 しかし天候により収穫量は低く(-10%)、果実はかなり小さく、皮が厚くなっています。
テイスティングノート
新鮮味溢れ、フィネスのあるワインを生み出しています。レッドベリー、カシス、チェリーのアロマが口の中に広がります。ワインは上質なタンニンで構成されています。
テクニカルシート
ブドウ畑の面積 | 10ヘクタール |
土壌 | 石灰岩の深い砂利と粗い砂 |
栽培されているブドウ | カベルネ・ソーヴィニヨン50% メルロー45% プチ・ヴェルド5% |
ブドウ畑の平均樹齢 | 樹齢30年 |
密度 | 10,000本/ ha |
収量 | 750 g /本 |
収穫 | 手摘み。 主な選果は収穫時に実施し、選果台での選果も実施。 |
醸造方法 | 伝統的なコンクリートと木製の容器 |
ブレンド | カベルネ・ソーヴィニヨン58% メルロー40% プチ・ヴェルド2% |
熟成 | 12ヶ月間オーク樽熟成 新樽25% |
私の感想
オーガニック/ビオディナミにより栽培されたブドウを使ったワインです。樽熟成は12ヶ月。
樽熟成18ヶ月のシャトー・フェリエール 2011と比較すると、こちらの方がフレッシュな印象を受けました。赤い果実のような豊潤な香りがあるので、フレッシュ感は強かったのですが、飲んで見ると力強さも感じるワインでした。
色は中程度のルビー色。香りは赤果実の豊かな香りを感じます。味わいは、タンニンは細かくエレガントですが、力強い印象も兼ね揃えます。辛口&フルボディです。
シャトー・フェリエール 2011年
ヴィンテージの特徴は、上述のシャトー・ラ・ギュルグと同じなので割愛します。
テイスティングノート
結果的に、ワインは力強さと優雅さの両方を持っています。 香りと味わいに素晴らしいフレッシュさがあり、タンニンはしっかりしていますが、絹のようです。
テクニカルシート
ブドウ畑の面積 | 16ヘクタール |
土壌 | 石灰岩基質上の深い砂利 |
栽培されているブドウ | 65%カベルネ・ソーヴィニヨン 30%メルロ 5%カベルネ・フラン |
ブドウ畑の平均樹齢 | 樹齢45年 |
密度 | 10,000本/ ha |
収量 | 800 g /本 |
収穫 | 手摘み |
醸造方法 | 伝統的なコンクリートと木製の容器 |
皮を含んだ発酵 | 19〜24日 |
ブレンド | 60%カベルネ・ソーヴィニヨン 36%メルロ 4%カベルネ・フラン |
熟成 | 18ヶ月間オーク樽熟成 新樽40% |
保存期間 | 5から30年 |
私の感想
色は中程度のルビー色。
とても華やかな香りでフルーティかつフレッシュ。ビロードのように細かいタンニンは、飲んでいる時は少なめでなめらかなワインのように感じますが、後から明確なタンニンを感じます。
とても美味しかったので、試飲後に40ユーロで購入し、日本に持ち帰りました。
インフォメーション
Château Ferrière
公式ホームページ:http://www.ferriere.com
住所:33bis Rue de la Tremoille, 33460 Margaux, フランス
近くにお得なワインショップがあるのですが、そのお店でも、またボルドー市内のワインショップでも、直営店以上に安くシャトーフェリエールを購入できるお店はなかったので、シャトー・フェリエールを買うなら直営店が良いと思います。
近くには有名チョコレートショップのマドモワゼル・ド・マルゴーの本店やお得なワインショップなどもありますよ。