南カリフォルニアで見た「日本食」の新しいカタチ
日本のふりかけとその消費動向、そして海外での意外な展開
日本における米の消費量は、ここ数十年一貫して減少傾向にあります。それに伴い、ご飯にかけて食べるふりかけの消費も同様に減少すると思われがちですが、実際にはその傾向は異なるようです。総務省統計局が公表する『家計調査(二人以上の世帯)』によれば、ふりかけの消費金額は増加傾向を示しています。
この背景には、ふりかけの市場が子供向けの商品から大人向けの商品へと広がったことがあります。たとえば、栄養価を高めたものや独自の風味を持つ高級志向の商品が登場し、多様化が進みました。その結果、ふりかけはもはや「ご飯のお供」にとどまらず、パスタやうどん、さらにはサラダのトッピングとしても利用されるなど、その用途は拡大しています。
また、ふりかけは日本国内にとどまらず、海外でも注目を集めています。高級レストランでは、刺身や創作料理のトッピングとしてふりかけが使われることもあり、日本的な「風味」を楽しむ外国人が増加しているのです。これにより、ふりかけが世界市場で一定の存在感を示し始めていることは確かです。
南カリフォルニアで出会った「ふりかけ」の意外な使い方
今夏訪れた南カリフォルニアでも、ふりかけの意外な使い方に触れる機会がありました。ロサンゼルスで参加したグルメツアーの中で訪れたビーガン専門店では、「アボカドのカナッペ」にふりかけが使用されていました。
掛けられていたのは海苔とごまのシンプルなふりかけで、これが驚くほど現地の食材と調和していました。この「海苔の香」というふりかけは「Ajishima Foods」という会社による製品で、6.5ドル(約1,000円)で販売されていましたが、よく見ると「Product of China」と記されており、日本製を装った中国製品だった点には驚かされました。
それでも、海外で日本のふりかけが意識の高い消費者を中心に受け入れられていることを実感しました。このような事例を通じて、現地の人々が求める「日本らしさ」と、日本人自身が考える「日本食」のイメージには隔たりがあることを感じました。
日本食の「らしさ」とロサンゼルスの「日本風」タコス
グルメツアーで訪れた別の店舗では、「日本風のタコス」というメニューに出会いました。一見すると普通のフィッシュタコスですが、その中に「日本らしさ」を象徴するものが潜んでいました。
それは添えられたキャベツの千切りです。日本では揚げ物の付け合わせとして定番のキャベツの千切りが、この料理を「日本風」として特徴づけていました。
キャベツの千切りは、日本以外ではそれほど一般的ではありません。たとえばフランスのアルザス地方で見られるシュークルート(キャベツの酢漬け)は発酵食品であり、生野菜としてのキャベツの千切りとは異なります。このキャベツの千切りが、ロサンゼルスでは日本的な要素として受け入れられ、タコスの付け合わせとして使われている点には、ある種の感動すら覚えました。
こうした事例からわかるのは、日本食が海外に広がる中で、その土地の文化に合わせて変化していくという現象です。その変化を「誤解」とみなすのではなく、文化の交差点として楽しむ視点が求められるでしょう。
ふりかけをはじめとする日本食の要素が、世界各地でどのように再解釈され、新しい魅力を放つのか。その未来に大きな期待を寄せています。
参考文献
https://dot.asahi.com/articles/-/241578?page=1
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kikaku/pdf/data01.pdf
https://newspicks.com/industry/SPD36MKZXMAZDYYX/?block=searchIndustryTab&ref=search