
郷土菓子には、その土地の歴史が深く関連しています。フランスを代表するワイン産地であるボルドーは、フランス南西部にあり、この土地の有名なお菓子はカヌレです。今日はカヌレとボルドーワインの関係についてご紹介します。
ボルドーの魅力的な焼き菓子、カヌレ
ボルドーの街を歩いていると、あちこちで目にするのがカヌレという焼き菓子のお店。外側はカリッとカラメルでコーティングされ、内側はしっとりとした食感。口に入れると、ラム酒やバニラの香りがふわっと広がり、思わず笑みがこぼれます。
カヌレは、かつて日本でも大きなブームを巻き起こしました。その熱風が吹いたのは、1990年代後半。しかし最近また、その魅力が再燃しているようです。若者向けのテレビ番組では、名店のカヌレを食べ比べる特集が放送されていたのも記憶に新しいですね。
ボルドー市内には、バイヤルドランやトック・キュイヴレといったカヌレ専門店が点在しています。どちらも市内のあちこちにあり、どちらを選ぶか迷ってしまいます。価格帯は少し異なり、トック・キュイヴレの方が手頃で、その分味わいも豊かに感じられました。個人的には、お得感もあってトック・キュイヴレ派です(笑)




このカヌレ、実は「カヌレ・ド・ボルドー(ボルドーのカヌレ)」という正式名称を持っており、まさにボルドーの誇りとも言えるお菓子なのです。
実はその誕生には、ボルドーで名高い赤ワイン作りが関係していることをご存じでしょうか?
ワインとカヌレの深い関係
ボルドーといえば、赤ワインの生産地としても有名です。私が訪れたボルドーのワイナリーでは、赤ワインの生産工程を間近で見ることができました。
まず、ブドウを収穫し、皮ごとアルコール発酵させるところから始まります。アルコール発酵が終わると、搾汁して皮とジュースを分けます。この時点ではまだワインに、アルコール、酸、糖といった成分とともに、ブドウの細胞や酵母、タンパク質が含まれています。これらの固形物を濾過で取り除き、ワインをクリアにしていきます。
そして、注目すべきは「清澄」という工程。

ワインに含まれる微細なタンパク質は、従来の濾過だけでは取り除けません。そのため、卵白を使って化学的に結びつけ、濾過できる大きさにして取り除くのです。ボルドーでは今でもこの方法が伝統的に行われており、卵白が泡立てられてワインに加えられます。
カヌレの誕生
さて、カヌレの誕生に話を戻しましょう。かつて、修道院ではワイン作りも行われており、卵白だけを使うため卵黄が余ってしまいました。そこで、修道女たちはその卵黄を無駄にせず、カヌレを作り始めたのだと言われています。このように、ボルドーのワイン作りとカヌレは、深い繋がりを持っているのです。