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カヌレとボルドーワイン

この記事は、2021年12月4日に開催していただいたイベントで話した内容を文章化したものです。

ほかの記事はこちらにまとめてあります。

私がリアル旅でボルドーを訪問したのは、2019年です。ご覧いただく写真のほとんどが実際に私が見て、自分で撮影したものとなります。

ボルドー発祥の焼き菓子、カヌレ

ボルドー市内を歩くと、カヌレという焼き菓子のお店が多く立ち並びます。

カヌレは外側がカラメリゼされていてカリッとしていますが、内側はふんわりしています。口に入れると、ラム酒やバニラの香りが口の中に広がります。

日本でも、ずっと前に流行りましたね。どうやら前回のブームは1990年代後半だったようです。最近またブームが来ているようで、若者向けのテレビ番組で有名パティスリーが出すカヌレの食べ比べをしていたのを見たことがあります。

中でもバイヤルドランとトック・キュイヴレという2つのカヌレ専門店があり、市内のいたるところにお店があります。

価格帯は微妙に異なっていて、トック・キュイヴレの方がお手頃価格でした。味はそんなに変わらない印象だったので、個人的にはお得な分、トック・キュイヴレの方が好きでした(笑)

そんなカヌレは正式名称を「カヌレ・ド・ボルドー」というようで、日本語訳すると「ボルドーのカヌレ」となります。なぜならばカヌレはボルドーで生まれたお菓子だからです。

その誕生の裏側、実はワインに関係があります。

赤ワインの生産工程(一部)

という訳で、ワインの生産工程を見てみましょう。

私がボルドーで見たのは赤ワインで有名なワイナリーばかりだったので、今回は赤ワインの生産工程をご紹介します。

アルコール発酵

まずブドウを収穫し、皮ごとアルコール発酵させます。赤ワインの場合、写真にあるような大きな大きな発酵容器で行います。

左はシャトー・マルゴーのセカンドワインであるパヴィヨン・ルージュ・デュ・シャトー・マルゴーを作っているステンレススチールタンク。右はシャトー・ムートン・ロートシルトを作っている大きな木樽です。

搾汁

アルコール発酵が終わると、搾汁をして皮とジュースを分けます。この段階でワインっぽいものができるのですが、この時点ではまだ、ワインの中には次の3つの成分が含まれています。

  • アルコール、酸、糖=いわゆるワイン
  • ブドウの細胞、酵母といった固形物
  • タンパク質

当然、一番上のワインの成分は残さなくてはなりません。しかし、下2つはワインを濁らせる原因となるため、一般的には除去します。

固形物は濾過をして取り除きます。そして、今回注目したいのはタンパク質の除去方法。

清澄

ワインに含まれるタンパク質は濾過では除去できないほど細かいので、別のタンパク質を加えて化学的に結合させ、濾過できる大きさにして除去します。この作業を「清澄」と言います。

ボルドーでは伝統的に、清澄剤として卵白が使われてきました。しかもそれは過去のことではなく、現代でも続いていることだったりするのです。

写真はシャトー・ムートン・ロートシルトの内部ですが、よく見るとボウルに透き通った青い液体を樽に流し込んでいます。この青い液体こそが、泡立てた卵白です。なぜ色がついているか&どうやって色をつけているかは分かりませんが、卵白を泡立て器で泡立てていたのは確かです。

カヌレ誕生

話をカヌレに戻しましょう。かつては修道院でもワイン作りをしていました。ワイン作りでは卵白だけを使っていたため、卵黄は余ってしまっていました。修道女たちが、これでは卵黄がもったいないと考え、それを活用するためにカヌレが生まれたそうです。