【ワインのラベル表示】地理的表示(GI)について

ワインのラベルに表示されている地理的表示(Geographical Indication, GI)は、ブドウが栽培された産地だけでなく、ワインのスタイルや品質の目安にもなります。

EUのGIは2008年に大きく改訂されていますが、手元ににある本に古い情報が掲載されていたため、混乱してしまいました。

そこで、今回は地理的表示(GI)について整理することにしました。

混乱のきっかけ

私は2010年に発行されたワイン初心者向けの本を持っていますが、2008年に改訂されたEUワイン法が反映されておらず、古い情報のままでした。

さらにWSETの教科書にも保護原産地呼称(PDO)の枠の中に、似た名前のAOPとAOCとあって「この違いは何??」と混乱したのです。

地理的表示(GI)が意味するもの

基本的に、地理的表示(GI)が意味するものはブドウの産地です。これは世界共通。

しかし地理的表示の考え方がEU(ヨーロッパ)とEU以外で異なります。その違いはワインの歴史の違いでもあり、ヨーロッパ共同体という経済圏を作った背景の違いでもあるようです。

EU内の地理的表示(GI)は、ブドウの産地だけでなく、そのワインの品質も規定されています。

ワインの品質とはつまり、その地理的表示(GI)を名乗るためには「このブドウ品種を使ってくださいね」「こういう醸造方法でワインを作ってくださいね」etcという細かいルールが法律で決まっているのです。

というわけで、表にまとめるとこうなります。

EU以外の地理的表示(GI)はブドウの産地を意味し、EU内の地理的表示(GI)はブドウの産地とワインの品質を意味します。

EU内の地理的表示(GI)

2008年のEUワイン法改革以降のEUの地理的表示は、保護原産地呼称(Protected Designation of Origin, PDO)、保護地理的表示(Protected Geographical Indication, PGI)、地理的表示のないものに大別されるようになりました。

以前は、地理的表示(GI)のないものはテーブルワインなどの名称で呼ばれていましたが、それがなくなりました。

つまり、まずは地理的表示(GI)があるかないかで分けられ、地理的表示(GI)がある場合にはPDOかPGIかに分られます。

フランスの地理的表示(GI)

フランスの場合は、PDOとPGIがフランス語に翻訳されてAppellation d’Origine Protégée(AOP)とIndication géographique protégée(IGP)になります。

しかし、実際に2009年以降に造られたワインにも、それまで同様、ラベルにAppellation d’Origine Contrôléeと記載されたワインを見かけるかと思います。

例えばこちらのワイン。

上から二行目に2016と書いてあるので、2016年に収穫されたブドウで造られたワインです。

しかし下段のVOUVRAYの下に小さな文字でAppellation Vouvray Contrôléeと記載があります。

というのも2009年以降もその国で伝統的に使われていた地理的表示(GI)を使用できることになっているためです。

つまり2008年まで使用していたアペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ(Appellation d’Origine Contrôlée, AOC)やヴァン・ド・ペイ(Vin de pays, VdP)、ヴァン・ド・ターブル(Vin de table, 日常消費用ワイン)は2009年以降にも使って良いのです。

(私の中では)地理的表示(GI)を学ぶ上で、この例外がさらなる混乱を引き起こしていましたが、ようやくスッキリしました。

イタリアの地理的表示(GI)

フランス以外の国についても「地理的表示がある場合はPDOかPGI」もしくは「地理的表示なし」という形は変わりません。

2008年のワイン法改訂が、EUの地理的表示をもっと分かりやすくしようという観点で始まっているためでしょうね。

イタリアの場合は、PDOは統制原産地呼称/デノミナツィオーネ・ディ・オリージネ・コントロッラータ・エ・ガランティータ(Denominazione di Origine Controllata, DOC)と、より厳格な基準を満たす統制保証原産地呼称/ デノミナツィオーネ・ディ・オリージネ・コントロッラータ(Denominazione di Origine Controllata e Garantita, DOCG)の2段階に分かれています。

スペインの地理的表示(GI)

スペインの場合もイタリアと同じ様に、PDOはデノミナシオン・デ・オリヘン(Denominación de Origen, DO)と、より厳格な基準を満たすデノミナシオン・デ・オリヘン・カリフィカーダ(Denominación de Origen Calificada, DODa)の2段階に分かれています。

ドイツの地理的表示(GI)

ドイツの地理的表示もまた、PDOが2段階に分かれています。クヴァリテーツヴァイン(Qualitätswein)と、より上位のプレディカーツヴァイン(Prädikatswein)となります。

ドイツの場合は、これまでの国々と概念が少し異なります。

フランス、イタリア、スペインはブドウが生産される場所に重きを置いているのに対し、ドイツが重視しているのはブドウの糖度

ドイツは北緯50度以上に位置するブドウ畑もあり、これはブドウが栽培できる北限でもあります。

ここまで涼しい地域だと、ブドウが熟し十分な糖度を蓄えるまで育てるのが大変で、熟したブドウにこそ価値が生まれるという訳です。

したがって、クヴァリテーツヴァインよりもプレディカーツヴァインの方が、ブドウの糖度が高い必要があります。

オススメの本

今回、私の頭の大混乱をスッキリさせてくれたのはこちらの本。

講談社選書メチエから発行されている蛯原健介教授の「ワイン法」という本です。

EU、とりわけフランスでワイン法が制定された歴史や背景などが書かれています。普段何気なく目にするAOCの裏側に、こんな凄まじい争いがあったのかと知り、とにかく驚きました。法律の本ですが、とても分かりやすく書かれていたので読みやすかったです。

帯にある「ブランドは制度である!」はまさにその通り。私は以前から、ボルドーがあれだけの銘醸地になったのは、ブドウ栽培に向いている土地だったからではないと考えていました。ブドウ栽培ならイタリアや南仏の方が向いているはずです。ボルドーは意外と雨が多いですからね。

ボルドーというブランドが造られたのは、法律がボルドーワインを守り、高付加価値を勝ち取ったからだと再認識できる本でした。